老いのひとこと

学園点描 其の一 むかしは小使いさんと呼んだが少しばかり失礼ではなかろうかと用務員さんに呼び名を変えたが最近では更に校務士さんと名称が改められたらしい。 思い起こせばむかしの小使いさんには人徳厚き御方が居られたもので昼間の校長先生よりも人望熱…

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如何にもみすぼらしい出で立ちでしかも危なかしい足取りでご老体が行く。 何時ものコースを辿る、薬局屋を過ぎ自動車修理屋に差し掛かれば、偶に挨拶を交わして呉れる若きエンジニア―さんではない恐らくオーナーと思しき御方が近寄り棒切れを差し出す。 見れ…

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昭和34年学卒の年に菊水分校勤務の拝命を受けた、親爺さんも余程嬉しかったのかわたしに背広を新調して呉れた。 当時金沢には「洋服の青山」がある筈もなく、わざわざ老舗の仕立て屋さんに採寸から依頼しあつらえて貰った。 自負心が沸々と湧きいずる思いを…

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無断掲載 図らずも足踏み公園のベンチに佇めばあすなろ幼稚園の入園式に出くわす、好く晴れた土曜日の事だった。 我が家のベランダの窓越しに月曜日の朝、扇台小学校の入学式に登校する様子が目に入る。 馬車馬のように働いた現役時代には三人の息子たちの保…

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金沢大学角間キャンパスの資料館へ赴き、旧石川女子師範の写真資料の開示を願い出た。 例によって免許証で身分を証し戸籍謄本で母との続柄を明示して我が母親の在り処を問い質した。 1925年に金沢第二高女を卒業し同年に石川女子師範本科第一部(修業年限五…

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嗅覚までも劣化したものか、それとも香りを失った白蓮の新種なのかわたしにかその香りが伝わらない。 桜に先んじて豪華な開花の美しさを誇らしげに披露する、一斉に白き天使たちが乱舞する。 ところが生ある物体はやがては衰退し終焉を迎える、生と死が表裏…

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無断掲載 列記とした名門校、嘗ての石川県立金沢第二高等女学校という実在した学校本体が其の面影を後世に伝承する系統的遺産が無い、泉野・玉川にも市教委・文教会館にもない。 ただ断片的な残滓が散在するに過ぎない実態に文化都市を自認する金沢には信じ…

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長享の一向一揆にあやかり高尾城攻略に挑んだ。 さくら晴れの快晴の朝風はヒンヤリと冷たい、9時20分に米寿と傘寿の祝事とこころして第一歩を踏み出す。 家内はまだまだ健脚だ、ふらつく身を奮い起こし一本杖を頼りに登る、恐らく此れが登り納めだろう。 兎…

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農作業雑記 其の一 馬鈴薯の種芋を求めてほがらか村へ赴いたが生憎売れ切りだという。 諸物価値上がりの4月を迎え家庭菜園愛好者たちは挙って生活防衛自己防衛のため一斉に立ち上がったのであろう。 年金受給者には株価高騰も賃上げラッシュも全く以って無関…

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農作業雑記 其の一 原付バイクのキック式始動でエンジン音が鳴る、冬越しした耕運機のスターター紐を引けば此れも高らかにエンジン音が鳴り響く、さあ共々春だ、脳作業の始動だ。 年齢の事など構っては居れない脳作業用の出で立ちでさあ出動だ。 脳作業仲間…

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舟田氏の執念には些か驚きを禁じ得ない。 彼は大正から昭和初期の頃小学校で教鞭を執ったという自分の叔父の足跡を執拗に追跡し遂には居所を突き詰めたのだと誇らしげに語る。 そして、彼が言うにはわたしの親爺の分まで探し当てたのだと鼻息を荒くして其の…

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若かりし頃用いたスキーのストックを持ち出し外歩きに際し二本杖を突くことにした。 山歩き専用のものもあるらしいが廃物の再利用と決めた次第、 見っともない見苦しい限りながらお構いなしのへっちゃらだ。 さすがリングの部分は切断したが何分長さが長すぎ…

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ああ棒切れや つわもの気取りの 夢のあと 法定の形のために仕立てた木剣が二本、日本剣道形を演ずるための太刀と小太刀、取り分け愛用の使い慣れた本枇杷木刀はわたしの分身だ。 黒檀まがいの木刀は重くて使い物にならず飾り物に過ぎなかったなあ、悪かった…

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一度限りの命、誰しもやがてはのたばり自然消滅するのを待つしかないのだが何分慾ったましい性分ゆえ延命策に汲々する。 憐れと共思しき其の魂胆はいつも閻魔大王さんからは笑いものだ。 最近はとみに下り勾配を意識するようになった、守備範囲が極端に狭ま…

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少し寄稿が遅れもうモクレンは散りそめる。 今日も歩める喜びを噛みしめながら一歩一歩を踏みしめる。 晴天下に雨傘携え如何にも泥臭いが擦れ違う人影もなく何処までもマイペース平気そのものだ。 目にする自然の風物だけを愛でる、又してもモクレンの花芽ほ…

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好むと好まぬに関わらず近い将来には必ずや其の中に身を潜めお隠れ遊ばされましょうことよ。 前回挑んだが生憎焼成時に体形が歪み本体に上から被せる家型蓋が納まって呉れない、こんな隙間風が吹き込むな荒ら家で永眠いたそうにも出来っこなかろう。 今日は…

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有名進学校の清風学園でカンニングが元で我が子が自殺へ追いやられた親御さんが提訴に及んだとのニュースに接する。 学校側に落ち度がなかりしものかと第三者委員会を設置し事の経緯を審査するものの指導上なにら瑕疵は見出せなかったとの結論に至ったのだと…

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舟田氏は当方の体調不良を見越してか桜の花芽を届けてくださった。 生憎、外出中にて家に置いて行ってくださったと家内は云う。 有り難いことです、外で見る桜と屋内で観賞する桜とでは其の趣きはまた別物なのです。 見るまでもなく此れは野田山墓地芝山の地…

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冷たい風を頬に受けながらも日ごとに花芽ほころび今にも咲かんとするが此の日も寒風がひゅひゅう過ぎる。 川面にはカルガモ群れ遊ぶが白き羽毛の異端児は見当たらない。 その代役に買って出たのかのように孤高の水鳥シラサギが一羽水辺に彩りを添える。 肌寒…

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無断掲載 日曜日の夜、宛てもなくチャンネルを探ればN響に出くわした。 荘厳な合唱曲を演ずる。 殊の外大編成だ、みな真剣な眼差しで一糸乱れず声高らかに絶叫する。 耳劈くボリューム音が鳴り響く、楽器が奏でる楽師たちが躍動しながら全身でリズムを奏で…

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無断掲載 国会審議で山本太郎さんから成田悠輔のことを聞かされた、質問通告がなかったらしく岸田総理にも聞き覚えのない人物らしく戸惑う様子が覗えた。 成田悠輔なる新進気鋭な経済学者が今喫緊の課題の少子化問題の最良の解決策はもはや生産性を喪失した…

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楽器のようで楽器ではなさそうな得体知れない飾り物がある、多分大昔に家内が嫁入り道具として雛祭り用の置物を持参し其れが今以って茶棚に格納される。 鼓のようで鼓ではなさそうな女児の玩具のような置物を此の度は題材として遊んでみることにした。 たた…

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突然、息子らの取り計らいで黄頭巾にちゃんちゃんこを着せられて家内共々祭り上げられてしまった。 恥ずかしながらも傘寿と米寿の悦びに浸った果報者に違いはないが実のところは何やかやと好き放題我が儘の掛けっ放しの家内こそが祝福される身ではあるまいか…

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三男坊が1985年6月14日百万石祭りの当日の朝方雷鳥の人となり上阪した。 幾霜雪を経て椅子帳工技師として大成し業界では名たる人物にまで昇りつめた。 また掛け替えのない伴侶を得て一男三女の子宝にも恵まれる幸せ者なのだ。 其の彼が家族と共に故郷に錦を…

老いのひとこと

甲高い抜けるような槌音が鳴り響く、他人の家であれ夢と希望が混ざり合った心地よい響きが辺り一帯に響き渡る。 古式に則った棟上げ式なども現代風の工法ではもう姿を消し、最早昔話となっしまったのだろうか。 今や嘗ての其の趣きはない、細長いクレーンが…

老いのひとこと

「木を見て森を見ず」と言うではないか、超長生きする小菊を愛でた数日後に意外な発見をした。 遠目でガラスの瓶をしげしげ見れば白い髭のようなものに気付いた。 何と3センチばかりに伸びた根毛ではないか、長寿の秘訣が見えてきたのです。 水中の水分のみ…

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今年の流行語大賞には「アベノリンリ」が間違いなくノミネートされるだろう、わたしはそう確信したい。 「倫理」という文字で表すには余りにも烏滸がましいのでそうしたのだと古賀茂明氏は明言する。 「モリ・カケ・サクラ」につづく「ウラガネ」政治が何の…

老いのひとこと

素足に草履を突っ掛け氷雨そぼ降る中しょぼしょぼと行く。 後から声がする、一瞬何方かなあと戸惑ったが園林寺の住職さんに気付く。 袈裟懸けなら兎も角私服で居られるので記憶がよみがえるのに暫し間を要したが思い付いたことはまだまだ認知の程度も大丈夫…

老いのひとこと

明治41年3月11日生まれの母としに執っては生誕116年目となる、奇しくも2011年の三一々と日にちは同じいではないか。 母と13歳年下の妹村本三枝は姉の後を追うように金沢第二高女に入り卒業した。 理由は定かでないが教師の道は踏まずに金沢市役所の吏員とし…

老いのひとこと

大山が鳴動したけれど鼠一匹すら出て来なかった、鳴り物入りで大騒ぎして開催された政治倫理審査会ではあったが全くの不発に終わった。 政治不信は以前に増して益々深まった、自己保身の塊りのような見苦しい責任回避のための猿芝居を延々と見せ付けられた。…