老いのひとこと

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久し振りに鳥越城址二曲(ふとげ)城址の在り処を遥かに目で探りながら大日川筋を遡上いたせば別宮・杉森・神子清水・左礫(ひだりつぶて)・三ツ瀬そして数瀬から終点阿手まで集落が点在する。

アスファルト道路こそ完備されるが其の大半は廃墟と化した廃村の姿を留めいたわしさがもろに伝わる。

実は道端で知り合う仲の出口さんの車に便乗し数瀬の集落をば探訪できた。

ママチャリコースで畑仕事に精出すお方と出逢う内に何時とはなしに世間話に興じ合う仲になった。

出口さんは出身が鳥越の在所だという、墓掃除に参るがご一緒しませんかと誘われたのを機に其の場で即座に快諾いたした次第になる。

バス停横に出口邸はデンと控える。

電気は元より生活調度品の多くが目に入る。

廃屋なんてとんでもない生活の匂いのする立派なたたずまいには只々驚いた。

養父母の遺影が座敷の壁面には所狭しと居並ぶ。

此の出口さんは義理堅きしかも仁徳深い立派な御方であることを知らされた。

在所の墓地と云えど其の大半は既に撤去され一族の二基が残されるのみである。

その墓地の下草は草刈り機で取り払い大きなご先祖のお墓を懇ろに清められる姿は気高くも見える。

此の炎天下の下並大抵の恩義心だけでは為し得ない格別の忠誠心を感じ取った。

わたしはと申せばわたしの為に採取して頂いた夏の山菜巨大なカタハと野ブキの葉っぱを木陰にて千切りながら傍観していたことになる。

何んともかたじけなく恐れ入った次第です。

隧道の中に湧き出ずる清水(しょうず)の何んと美味しいことか猛暑の咽喉を冷たき霊水が潤してくれたのです。

尾小屋鉱山を経由して軽海に出て加賀産業道に入り家まで届けてくださった。

有り難き一日でした。