老いのひとこと

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歩きながらニュースのネタを探す。

馬替の一角に他人様の畑があるが農作業に従事する農夫の姿は終ぞ見たことがなかった。

処が偶々先日の事、立派な大型耕運機で畝上げ作業中の場面に出逢った。

 

実は此の畑の主は実に奇妙なる経歴の持ち主なのです。

と云うのも昨年の初秋のころ畑地が出現し何かしら種を蒔いた形跡に気付いた。

やがて芽が出て生育し晩秋には食べ頃の小松菜らしき野菜が目の前に展開された。

しかし農夫はいない、しかも一向に収穫した気配もない。

来る日も来る日も指を舐め乍ら横を通り過ぎたことを覚える。

その内全く手付かずのまま一冬が過ぎ去って春と共にとうとう薹が立ち始め黄色い花を咲かせてしまった。

見事なお花畑に変じてしまい、素人カメラマンが盛んに接写を試みられる場面にも遭遇した。

 

そして、そのお花が終えた遂先日の事

始めてその農夫らしき人物の拝顔に与かった。

初老のその方が申すには此の畑地に雑草が繁茂して皆さんへ迷惑を掛けるのを避けたのだと云うのです。

何かしら作物を植えれば雑草が隠れ目的が達成できるとおっしゃる。

今どき珍しい実にご奇特な御仁で在られたのです。

わたしはシャッポを脱ぎました、頭が下がりました。

 

今此処に此度は落花生を植えるのだと意気込まれるのです。

無駄を承知の上でそれを淡々と貫き通す。

立派なお方です変わったお方に違いがない。

一本頂戴、参りました。