老いのひとこと

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    無断掲載

宮尾登美子の長編ドラマ「藏」を飽きずに見終えた。

大正から昭和初期の豪農兼豪商一家の目まぐるしい浮沈と愛憎が繰りなす人間劇場の中に完全に吸い込まれてしまった。

「烈」と云う名の主人公の生き様に度肝を抜かれる思いで魅入っていた。

目に障害を持つ此の少女が終に失明に至る過程の中に次第に変容を遂げ成長をとげていく姿に見るものすべてが引き付けられてしまった。

厳父が度重なる重圧の余り打ちひしがれて酒蔵までをも投げ打つ決意を為した時むすめ「烈」が逆に父を鼓舞し説得しお家再興の旗手として蔵元を存続させるに至る。

縁談話が纏まり懸けた時には男の価値は学歴にあらずと慶應ボーイとの良縁を蹴って我が意中の極貧の一青年の胸の中に自ら飛び込む進取の気風に富む盲人女性でもあった。

此の時代にもう既に少女「烈」はジェンダー平等の思想を逸早く先取りした恐るべき時代の寵児であった。

実母同然に終始「烈」に寄り添う此の家の影武者的存在の「佐穂」からの薫陶の賜物に違いない。

込み上げる感涙に咽びながらの四時間に及ぶ観劇は心地よい疲労感に包まれた。