老いのひとこと

農作業雑記

其の一

育苗ポットに種を蒔く、教本に依れば3~4粒で良いものを万が一しくじったら拙かろうと一摘みほど埋め込んだ。

ブロッコリー・白菜・キャベツの種は其の図体とは似付かず随分小粒だ。

針の穴から通り抜けそうな生命体がよくぞ見違える大きさにまで育つものだ。

正しく自然界の驚異に値する。

三昼夜を経て此の幼気ない生命体は一斉に発芽の産声を上げた。

処が案の定、狭い空間に犇めき合う、三密どころか四蜜、五蜜の只ならぬ状況下にそれでも皆がみな我先に生きんと日光に向かい懸命に背伸びする。

皆がみな立派に成長をとげる権利を有する幼き苗たちではあるが断腸の思いで間引きを断行せざるを得なかった。

秀でた一本の為に何本ものあどけない命が次から次へと抜き取られ抹殺される。

身勝手な人間の仕業を切なくも儚くもどうもやり切れない思いだ。