老いのひとこと

 

どう見ても荒ら家には分不相応のようだ。

白滝のような絢爛豪華なランの花、あたかもチョウが群れ飛ぶようなランの花。

高温多湿な熱帯雨林が生まれ故郷だと云う。

此の花は土の中に根を張ることなく、かと言って他の植物に寄生して養分を吸い取るわけでもなく流木や岩の裂け目に根を着生する極めて特殊な植物であるらしい。

それ故にえらく管理が大変で厄介らしい。

乾燥を嫌い湿気を好むと云うらしいが風通しにも注意が要りそうだ。

何より厄介なことは冬の冷気を避けねばならない。

厳密にいえば年間気温20度前後を保つことは現実的には不可能に近い。

極寒期には室内でも氷点下の非現実的環境下では此の花の生命維持は明らかに難しい。

とは言えども心尽くしの贈答の植物なら為せる術を尽くさねばなりません。

厳重に新聞紙を貼り合わせ繋ぎ合わせてすっぽり被る紙製フードを準備した。

更に其の上から特製ビニール袋を覆い被せる手筈とした。

段ボール箱に段ボールを積み重ねて足元を温める。

荒ら家の住人は此の花の越冬作戦に苦々しくも悪戦苦闘中なのだ。