老いのひとこと

あすなろ公園で二つの用件を済ませ家路に付いた。

額新町の交差点の直ぐ手前の小路から杖を突いたご高齢の奥方が出て来てわたしの前を行く。

信号を渡りきりフラワー薬局の方へ歩みを執られた。

わたしは其の数メートル後ろを行けば角の自動車修理店から乗用車が一台後ろ向きにハンドルを右に切りながらゆっくり下がり始めた。

わたしはてっきりミラーに映る歩行者に注意しながらバックしているやに思いきや一向に止まろうともせずに車は音もなく動く。

わたしはとっ拍子もなく有らん限りの声で何かを絶叫した。

ハンドルを握るドライバーと杖を突く奥方の双方に訴えた。

歩行者が倒れる寸前に車は止まった。

事なきを得た。

人身事故が未然に免れた。

矢張り運転席には高齢者か、やれやれ助かったとわたしに照れ笑いを浮べる。

奥方は腰のあたりに手を遣り軽く当たったのですよ、助けてくれてありがとうございましたと頭を下げて呉れたのでした。

 

此れ決して他人事ではない、他山の石としてしっかり肝に銘ぜねばならない。