老いのひとこと

此処のところは雪がない、専ら修行道場へ直行し同じ経路を往復する。

少々冷たいが永平寺草履のご利益であろう難なく耐え抜く、歩むことの上に更に偉大なる付加価値を授けられた思いだ。

 

人通りの途絶えた街中で遥か向こうから人影が少しづつ近付く。

わたしの歩みに似て随分とのろい。

ご老体かなと目を凝らせば何とそれば補助輪のある自転車に跨る我が子に付き添う若きお父さんお母さんであった。

 

わたしは此の素晴らしき神々しい光景に自ずと足止めされてしまった。

無心の表情で懸命にペタルを漕ぐが旨くは行かない。

パパとママの期待に応えようと踏ん張る

姿が在りありと映る。

歳を取ったものだ何故かしら我が目頭が熱くなる。

「ガンバって」「ガンバレよ」「イヤ上手だな」と自然に口にする。

いたいけない幼児は上目づかいに髭ずらを見上げて誇らしげな可愛い笑みを返してくれる。

若きパパさんも笑みを湛えながら小さく頭を下げられた。

 

遠き昔に新保本の農道で長男に手懐けたことを思い返した。

次男三男にはその必要はなかったことを覚える。

そう云えばふれあい公園の芝生にて一番孫と共に特訓に明け暮れしたのもほんの少し前だったなあ。