老いぼれの北海道行き《2》

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北海道紀行           二〇〇五年秋
 
何とも気障で高慢ちきな鼻持ちならんことを抜かしやがる奴がいたものだ。
困ったものだ。
 
② 当たり前なことだが北海道へ来た以上はルンルン気分で観光地を巡り歩くことも確かに不可欠なことに違いない。
それにしても、一世紀半の昔には蝦夷地と称したアイヌ先住民の楽天地に他ならず、原始のままの大自然を豊富に宿す未開の大地であった。
その地に明治政府が入り込み「開拓使」が設置され大地は揺れ動き始めた。
先人たちの並々ならぬ筆舌に尽くしがたき辛苦の果てに、今日の姿にまでに変容させた事実を心の礎に秘めておかねば成らぬは言うまでもない。
恐らく、そこでは先住民の悲痛なる叫びが原野に響き渡ったであろう。
しかし、そんなことには無頓着になり蔑ろにし、もうどうでもよいことにしてしまう。
今実りの秋に展開されるコンバインの舞台も馬や牛が草食む牧草地も、一直線に突き抜けるハイウエイも路肩に草生す旧街道も、家並みも町並みも七色のネオン煌めくすすき野の繁華街も元をただせば原始の森を薙ぎ倒し根株を掘り起こし営々として築き上げたたま物に違いない。
未開の原野に挑んだ先人たちの血と涙と汗の結晶に他ならないことに気付くものは意外と少なかろう。
このことを抜きにして北海道を語ることは出来ぬのであり語る資格がないし語っても意味がないのだとこの地に足を踏み入れたがこそ、そのように思うのである。
もとよりガイドさんは、こんな話に触れることを避けるのであります。
こんなことを期待する方がおかしいのです。
 
バブル崩壊後長きに亘り低迷し続けた日本経済も今ようやくにして、息を吹き返した感があり東京市場日経平均株価が13400円台を狙う勢いで売買代金が2兆円を超える日が6日連続だと大々的に伝えている。
これは一九八九年のバブル期以来の快挙だと二〇〇五年九月二八日の朝刊は得々と伝える。
奇しくも巳年景気かアベノミクスか,二〇一三年一月十一日の株価は10800円の大台に乗ってしまったではないか。