先達の師が日本剣道形を演ぜられた。
憚りながら見取り稽古をさせて戴き至らぬ所見を述べるしだいです。
見取り稽古は演武者の秀でた技前や心意気を盗み取り学び取ることです。
申すまでもなく今日の素晴らしい演武から多くの収穫を戴きました。
ただ其の中にあって少々こころ残りし箇所を僭越ながらも指摘させて戴きました。
決してあら探しを為したわけではなく翻っては我が身に置き換え今後の指針とか心得として活かさねばならないと肝に銘じたしだいなのです。
・座礼に際しついうっかり足を組み重ねないよう注意したい。
・摺り足に徹し傍目に歩み足のように見られぬように注意したい。
・構えし折に左踵が着床し居着くのことなきように為さねばならない。
・七本目―胴を斬って右膝を着いた折には自分の右斜め前の両腕の延長線上に刀身が位置するように留意いたさねばならない。
・小太刀二本目―
- 仕太刀が入り身で攻め入ろうとするので
- 打太刀抗しきれずに右足退いて脇構えに開く
- 仕太刀すかさず入り身で一歩攻め入る
- 打太刀は諸手左上段より真っ向に斬り込む
- 仕太刀は体を左に開くと同時に裏鎬で請け流す
此の①から⑤までの目に見えぬ流れのような攻防を剣の理合通りに如何に演武するかが見ものとなる。
元を正せば斯くなる些末なことは全て捨象して真剣(刃挽き)から繰り出す臨場感溢れる演武が成り立つかどうかである。
元より危険を察知して遠間での空間打突では意味をなさない。
その点今日の演武は申し分ない人の心を動かす名演武でした。