老いぼれ教師の回想記《108》

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その六  石垣の 陰に潜みし 将中や
 
 
礼に始まり礼に終わる=その1
 
 小将町中学校の校区は此花町小学校と瓢箪町小学校に馬場小学校の三つの校下に跨ってある。
でも校舎は材木町校下飛地に建つという極めて変則的な形態にあった。
従って生徒たちは旧市内の繁華街の真っ只中を通学路とせざるを得ない。
 随所に交差点や信号があり、特に公園下の交差点は交通量が激しく警察官のみならず地域のボランテアの方々が好意的に生徒たちの安全確保のために奉仕された。
 生徒たちはこれに自発的に対応した。
「ありがとうございます」と大きな声で屈託なく挨拶を返した。
気持ちよい心のこもった挨拶ができる生徒が育っていた。
 兼六公園に隣接する関係で県外からの観光客の目には心洗われる光景として映り殊の外好印象を植えつけているらしい。
 
 新聞の投書欄によくよく讃美の言葉が掲載された。
かくも純真無垢なる中学生が存在することに驚嘆の声が発せられた。
しかし、そのこと自体をよく考えてみれば日本国の教育がいかに荒廃しているかと云うことへの裏返しであり決して喜ぶべきことではない。
事実私がこの学校に着任した折に、そのことを強く感じ取ったことを思い返すのである。