老いぼれ剣士の夕雲考《105》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(31)
 
針谷夕雲の遺志を継ぐ
 
㉔【夫に付思ふに、今予に直に相傳を受る人にも、面々の天機の得やうにて、理を説く所に變りはなけれども、聞得る所に少しづつの變りあるやうなり、又其人の他へ説き聞かせられ教へらるヽ上に、面々の天機に任せて説き聞かせらるるれば、其聞人の心得又差別あるべければ、二傳三傳の後は先師の本分をも取失ひて、予が愚業の意地合ひを空して、】
口語訳
 
無住心剣術―その剣理の正統性
それにつけても思うことだが、この私より当流の極意を受け継いだ人たちの中にも、いろいろな天賦の才覚の持ち主がいて、こちらの説明する内容が同じでも、それを聞き取る側の違いで異なった解釈をする者が出てくることもあながち頷けることなのです。
また、それらの者たちが他人へ説明するわけだが、それぞれの才能に任せて接するので受け取る側の心得次第で、その話が二転三転すれば夕雲流剣術の本質を根本的に取り違え、又私の愚案の意味合いまでも空しいものにしてしまうということも十分に在り得ることではないでしょうか。