2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

うらなりの記《96》

『母よ』 ① 母は五十年前に国立金沢病院で骨肉腫という癌を患いこの世を去った。 考えてみれば其の当時の様子を知る父はとっくに他界した今、せめて当医院にて情報提供が有りはしないものかと照会を試みたが、五十年は愚か最早十年間を期して患者のカルテの…

老いぼれへぼ剣士の夕雲考《93》

夕雲流剣術書 小出切一雲 誌(19) わが師 針谷夕雲はどのような人物か ⑫ 【禪學の意味より兵法を窺ふときは、元祖上泉をはじめ外の戸田も卜傳も、自己の師玄信が心入も八寸の延がねも、みなことごとく妄想虛事の類にて、】 口語訳 針谷夕雲の剣理 禅の教…

老いぼれ教師の回想記《96》

テーマ <リスクを恐れず敢然と挑戦するサントリーへの一考察> 1 オールドに見る側面 (3)オールドのその地位を確固不動足らしめた二本箸作戦は、わが国マーケティング史上においても特筆に値する快挙である。 自由化時代の到来は、宿敵スコッチとの対…

老いぼれの独り言

開幕式みる 常に勝者の論理を貫き通して創り上げた大英帝国の威容を見せ付けられた。 其処に横たわる幾多の呪わしき矛盾点を完璧に隠蔽し見事にカムフラージュした演出力には驚かされる。 画面には、人間の生活の営み勤労の尊さ自由平等の価値観で満たされ…

老いぼれの犬日記《5》

⑤ 平均台 散歩の道すがらセレモニーホールの駐車場に設置されたブロックの囲いの上を、この犬はよく好んで歩いた。 当初は、乗れ!の合図で飛び上がっていたが、それが常態となると催促なしに自ずから上を歩いてくれた。 四足ゆえ苦も無く熟せる。嫌がるこ…

老いぼれの弓事始め《8》

⑥5月29日は入門講座第9回目、二度欠席したわたしには第7回目と相成る。 とんとん拍子に工程は前へと進み素打ちの後巻き藁にて立射を熟 ( こな )し、今日は実際の実物の的を射た。 5メートル足らずの近距離とはいえ心地よい的中音を自分の耳で聞いた。 …

老いぼれの台湾行《10》

その10=台北の夜 1―オプションキャンセル 台北が誇る高層ビル101の展望台より夜景に感嘆の声を上げ、次いで露天街の商店で生きた台北の生態を見聞するオプションを勧められたがキャンセルした。 金魚の糞のようにぞろぞろ連なって行動することからも…

老いぼれの形稽古《13》

太刀の部4本目=その3補遺 双方、表より真向に切り結び互いに鎬を削りながら相中段に至る。 その刹那、仕太刀刀圧弛めて誘った瞬間打太刀は先を取って突いた。 仕太刀は、その突きを咄嗟に巻き返し面を打ち下した。 明らかに、教本通りに剣の理合いを突き…

雑草園顛末記《7》

⑦ 庭での残務 剪定後の後始末がこれまた大変だ。 束ねて市の可燃物処理へ持ち込む手もあろうが、御上に委ねればCO2問題等時代の趨勢に逆行してしまう。 そこでわたしは、斯くなる煩雑な絡繰りから逃れんがために奮発を決意し「ガーデンシュレッター」な…

うらなりの記《95》

(財)石川県教育文化財団の呼び掛けに応募しのだが、掲載されることを辞退した母へのエッセイを、見苦しい限りではあるがさらに続けねばなりません。 『母よ』 ① 私は七十七歳、わたしが二十歳の時母は数え五十歳で死去した。五十数年前に五十歳の若さで母…

老いぼれへぼ剣士の夕雲考《92》

夕雲流剣術書 小出切一雲 誌(18) わが師 針谷夕雲はそのような人物か ⑪ 【此禪師にひしと歸依して、本則十二三則も實參を遂げて、】 口語訳 夕雲先生は、この虎白禅師の教えに従い其の威徳を仰ぎ仏道に改宗された。 そして、自ら参禅して十二三もの古則…

老いぼれへぼ教師の回想記《95》

サントリーのモデレーション・キャンペーンで かつて採用された新聞広告の一齣 テーマ <リスクを恐れず、敢然と挑戦するサントリーへの一考察> 1 オールドに見る側面 (2)市場細分化戦略へのアプローチがいくつかある中で、いずれにしろオールドで見る…

老いぼれの犬日記《4》

わが家の犬 ④体調不良で歩行困難に陥った折に、家の前にある1メートル強の側溝を渡り切れずに蹲 ( うずくま )ってしまった。 網状のフタに足が囚われるのを本能的に嫌った仕草であった。 それで、板切れで橋渡しできるように仕向けたら、りりは躊躇 ( ため…

老いぼれの弓事始め《7》

礼記ー射義ー 弓事始め ⑤ 道場訓 島田虎之助の”それ剣は心なり。 心正しからざれば 剣また正しからず。 剣を学ばんと欲するものは まず心より学べ。” 阿地知道場や養浩館道場では、かつて少年剣士たちが元気の良い声で唱和していた。 全剣連の定むる剣道の…

老いぼれの台湾行《9》

その9=忠烈祠と衛兵交代 日本が台湾を植民地として支配統治していた頃に護国神社の一社として建てられた場所に、中華民国政府が戦没者の慰霊を奉る社として1969年に建立したのだという。 それを忠烈祠 ( ちゅうれつし )と呼び台湾各地に同じ名のものが…

老いぼれの形稽古《12》

日本剣道形稽古心得覚書 太刀の部4本目=その2 その間の気位は両者対等なのである。 そして、両者やるかやられるかの気迫で鎬を削りながら相中段に至る。 刀圧を両者ともに手元に感じながら、仕太刀が咄嗟にその刀圧をやや弛めた瞬間に打太刀は刃を右して…

老いぼれの独り言

大津事件に思う 一人の少年が自ら自分の命を絶った。 なんと、紙面のトップに“先生は笑っていた”とある。 ”先生は怒っていた“でも”泣いていた“でもない。 教え子がいじめの淵に突き落とされる中、それを見て担任の教師が笑っていたとは、一体これはなんだ。…

雑草園顛末記《6》

⑥ 修理完了 本来なら庭師に依頼すれば済む話だ。ケチの権化のような存在には万札の二三枚は相当に痛い。 スッカンピーになってしまったしがない年金生活者にはその身になって初めて実感として伝わるのです。 体が動く内は私自身が庭師さんに剪定師さんに早…

うらなりの記《94》

『母の思い出』 ⑨ 敗戦間もないころ、かの東京地裁の山口良忠判事がヤミ米を拒み遵法 ( じゅんぽう )精神を貫き、あえなく我が三十三年間の命を絶ったという事実からすれば、どん底にまで落ちぶれ他人のゴミ箱を漁 ( あさ )ってまでして、とにかく生を維持…

老いぼれへぼ剣士の夕雲考《91》

虎白禅師 夕雲流剣術書 小出切一雲 誌(17) わが師 針谷夕雲とはどのような人物か ⑩ 【予が先師夕雲は、十三四歳より兵法品々を習ひ、後に小笠原が弟子に成つて神陰を傳へ、八寸の延がねの秘傳まで殘らず請け繼いで、初の内は小笠原が弟子の中にて二人三…

老いぼれへぼ教師の回想記《94》

(財)産業教育振興中央会が編纂する冊子の収録の為原稿依頼があった。 わたしは、サントリー株式会社木曽川プラント分を担当した。 テーマ <リスクを恐れず、敢然と挑戦するサントリーへの一考察> 1 オールドに見る側面 昭和50年度において、サントリー…

老いぼれの犬日記《3》

わが家の犬 ③若かりし頃の、この犬の自慢の種はそのジャンプ力であった。 確かにその脚力には非凡なものがあった。 丁度私の背丈分ほどのブロック塀に挑戦を仕掛けた。 わたしは指先で塀の高さを指示し、それ行け!ジャンプ!ピョッンだ! とけしかけると、…

老いぼれの弓事始め《6》

弓事始め ④膕のこと 入門ではなく門の前に立つだけのものが恐れ多くも”膕”について語る資格はまだない。 剣道でも、膕についてよく言われたものだ。 膕を伸ばせ、曲がってるぞ。 膕がたるんどるぞ、もっと張れ! よく罵声をもらったものだ。 先達からよく言…

老いぼれの台湾行《8》

正面の孫文像 その8=台北の故宮と北京の故宮 遺憾ながら、わたしには大中国の過去の偉大なる文物を鑑賞し評価する素養はないに等しい。 はっきり言って、チンプンかんぷん分からないと言っていい。 数年前に訪問した北京の故宮と比較して何が異なるかと云…

老いぼれの形稽古《11》

日本剣道形稽古心得覚書 太刀の部4本目=その1 四本目で互いに間合いに接し、相手の正面に打ち込むとあるのだから相互に相手の正面に届く間合いであるべきと理解すれば、八相、脇構えで三歩入る歩幅は小幅では届かない。 従って、普通の歩幅で出ればよい…

雑草園顛末記《5》

伸び放題のあばら屋 ⑤ 生垣剪定 カイズカイブキの徒長枝が見事に伸び放題のままだ。 美観を損ねてご近所にもさぞかし迷惑を掛けてはいまいか。 三余年越しに放置した怠慢の結果だ。 先日、老骨に鞭打って剪定作業に重い腰を上げてみた。 大層して電動器をセ…

うらなりの記《93》

母への想いー(8) 『母の思い出』 ⑧今でも忘れはしない。薄暗い流し場で残滓を物色している凄惨なる母の姿を思い出すたびに無性に涙が溢れて仕様がない。 同時にあの時、母はなぜ毅然とした態度でわが子の余りにも恥ずかしい行為を身をもって制止しなかっ…

老いぼれへぼ剣士の夕雲考《90》

夕雲流剣術書 小出切一雲 誌(16) 夕雲の師匠小笠原源信齋 ➈-4 【歸朝の後上泉傳の古き相弟子共に立合ひ、八寸の延がねを試るに、一人も手に障るものなく、恐らくは先師上泉が存生にて立向ふと云とも上泉に勝は取せまじ物をと思ふ程の道理を發明して、…

老いぼれへぼ教師の回想記《93》

企業見学レポート=その13 6 おわりに 各社にて、垣間見たモラール高揚のための施策の数々、これをば三無主義に毒された教育の現場に如何にして還元すべきなのか、いやいや還元すること自体が果たして可能なのか。 可能だとするならば、如何なる条件を整…

老いぼれの犬日記《2》

わが家の犬 ② 先日突然、りりは極端な食欲不振に陥ってしまった。 何の前触れもなく、突然おそった。 食事はおろか好物の牛乳も口にしない。水さえも飲んだ気配無く、一日中ぐったりと横たわる。 悪い予感が走り、子や孫へメールを発信して置く。 そして、取…