老いぼれの形稽古《13》

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太刀の部4本目=その3補遺
 
 双方、表より真向に切り結び互いに鎬を削りながら相中段に至る。
 その刹那、仕太刀刀圧弛めて誘った瞬間打太刀は先を取って突いた。
 仕太刀は、その突きを咄嗟に巻き返し面を打ち下した。
 明らかに、教本通りに剣の理合いを突き詰めれば4本目は「後の先」の技となる。
 
 双方が切り結ばんがために切り結んだのではない。
 また、鎬を削りながら相中段と成るべくして成ったのではない。
 双方遣るか遣られるか、必死の思いで相接近すれば自ずと切羽が詰まり鍔競り合いと相成ろう。
 この膠着を嫌い避けるべく、仕太刀が刀圧弛め誘う形で打太刀の先を待って、透かさず刀身の縁切ることなく巻き返し面に行く。
 決して、突きに来ることを予知したのではない。
 咄嗟の技なのだという。その辺が何とも言えぬくらい難儀で高尚だ。