老いのひとこと

ご好意を戴いた修理店の社長さんの手前、スキーストックを突くわけには参りません。

それでむかし採取した流木を代用する古木杖と併用し二本杖にしてお出掛けだ。

正式の操作法を心得てはいないので我流でゆけば直ぐに肩がこり突くのが邪魔なのでだらしなく引き摺る有り様は杖に対し無礼では御座いませんでしょうか。

 

二本束ねて後ろ手にして楓並木をそろそろ行けば前方に人影あり、初老の奥方がゴミを拾われる健気なお姿にチョイと声を懸ける。

「美しい公園ですなあ」「道理でゴミ一つ落ちていない並木道で結構ですなあ」と世辞のような挨拶を交わす。

 

すると俄かに流木杖を絶賛する、わざわざ手に取って天然のグリップがよろしゅうござんすとベタ褒めだ。

よくは聞こえなかったがむかし銀行に勤め仲間たちとよく白山や医王山へ登ったなどとよくおしゃべりなさる。

杖があれば安心で何よりも気休めになりましょう、転ばぬようにお気をつけ遊ばせと暫しの立ち話に興ずる。

 

高橋川の川沿いで手押し車のお方からもどうしたことか此の天然木を豪く褒められてしまった。

 

何事もなかったように馬替上橋にはツバメたちが気持ちよくスイスイ群れ飛んでいる。