老いぼれへぼ教師の回想記《94》

イメージ 2イメージ 1                                                                                                                                                                                                                                              
(財)産業教育振興中央会が編纂する冊子の収録の為原稿依頼があった。
 わたしは、サントリー株式会社木曽川プラント分を担当した。
 
テーマ
<リスクを恐れず、敢然と挑戦するサントリーへの一考察>
 
1 オールドに見る側面
 昭和50年度において、サントリーオールドはアメリカ合衆国シーグラム社のセブンクラウンを凌駕し、単一ブランドとして販売量世界一を記録した。
 まさにオールドはドル箱的存在になった。特級ウイスキー市場でのシェアは80%を超え、同一価格帯に限れば実に90%に達し最早寡占の域を出て独占的地位を確保しつつある。
 しかし巷間では、この事に対してサントリーは広告で酒を飲ませる宣伝主導型の企業との流言飛語が飛び交う。
 そこで、この種の中傷に対する反論を、オールドに見る市場戦略の絶妙の策の幾つかを通して言及してみたい。
 
(1)我が国におけるマーケテイング理論の主流は供給過剰の解消策としての短期的な市場戦略が重きをなしていた。
 その中にあって、サントリーは長期ビジョンに根差した市場戦略が構築された特異なる存在であろう。
 順風満帆、バラ色の繁栄が約束された時点においてこそ先を見越した形で最悪の状態を想定しつつも、悲観的発想から現時点での潜在的な欠点をば浮き彫りに致そうとする。
 この事によってこそ、始めて長期戦略計画が得られることを、鳥井副社長は強調される。
 もっとも、ウイスキーそのものが原酒を長きに渡り寝かせるという宿命的な背景、あるいは戦後のアメリカンナイズされた文化スタイルに便乗したことが自ずと長期的な思考原理と結びついた事実も否めないのである。
 ただ、ビールに関しては言うに及ばず「タヌキ」「ダルマ」の愛称で人口に膾炙したボトルデザインが最も象徴的に、そのことを実証していることを指摘致したい。