老いぼれの犬日記《4》

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わが家の犬
 
④体調不良で歩行困難に陥った折に、家の前にある1メートル強の側溝を渡り切れずに ( うずくま )ってしまった。
網状のフタに足が囚われるのを本能的に嫌った仕草であった。
それで、板切れで橋渡しできるように仕向けたら、りりは躊躇 ( ためら )いながらもよたよたと渡り切ってくれた。
かつての健脚振りは何処にもなかった。悲しみに似た哀感が飼い主にもひしひしと伝わった。
点滴の御利益を祈る思いで願った。
そして、その甲斐あってか徐々に餌を口にし始めてくれた。
翌朝、橋渡しの板切れを置いたが、りりは何故かしら板には足を触れずにたどたどしくも自力で飛び越えたではないか。
ワタシにも自尊心がある。このような心付けは無用だと言わんばかりに意地を張ったようだ。
犬畜生にしたら見上げた根性に思えた。
心なしか得意然とした面立ちに見えた。うれしそうな顔をしていた。
犬にもプライドや自尊心・矜持を保持する能力があることを知った。
どうにか、一命を取り留めたようだ。