老いぼれの独り言

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日毎に復興の槌音が高まり新生東北の勇姿が随所にみられ始めていた。
とはいっても、あの災禍の爪痕は未だにあちこちで見せ付けられました。
手付かずの廃屋廃墟が散見されたし、また入江に面した箇所は押し並べて平坦な新地のように覗えるのだが其処にはかつて民家が軒を連ね商店街が立ち並ぶ生活の場であったは間違いない。
その地に戻れる当てもなく未だに仮設住宅が余儀なくされるその現実は何を物語ろう。
一日も早い復旧復興が急がれるはずだが今以って
四畳半二間の生活が三か年以上にわたり続いてしまった。
その精神的肉体的労苦は最早限界を越えてしまったでありましょう。
 
何の根拠もない憶測だけで物申すことは甚だ怪しからんことです。
実は、このような光景を見てしまったのです。
三陸ホテルに投宿した折、早暁四時過ぎに目覚めてしまった。
一風呂浴び三階ロビーに展示される3.11時の惨事を留めた写真資料に目を通したあとフロント近くに設置される「きときと文庫」称する仮設図書室の方に近付いてみた。
よく見ると人影が映るではないか。
こんな時刻にどうしたのかなと少し不審に思わざるを得ない。
電燈の無い薄暗い所にしゃがみ込みうずくまるようにして書物に読み耽る。
トレーナーに鼠色の長袖カーデガンを羽織る身なり身ごなしでおかっぱ姿はどう見ても中学生のように覗える。
ところがどうしたことか軽々しく声を投げかけれる雰囲気にはなかった。
何処となく打ち沈んだ心悲しげな横顔からは何か大きな秘め事を宿しているかに見えた。
仮設の家を出て此のホテルの一角に自分が安住できる唯一の空間を見出したのだろうか。
避難所と化した此のホテルの3年前の姿を今以って思いだしこころの安らぎを求めて此の書架の中に身を置いたのだろうか。
いずれにしても、此の彼女のこころの傷痕は未だに癒されてはいない。
災害の爪痕はこのような形で今以って残されている。
フロアーで新聞に目を通し再び文庫の前で捜したが既に彼女は音もなく立ち去った後だった。
何となく不憫に思ったし気掛かりで仕様がなかった。
がんばれよ、今日一日がんばれよ!
明日もがんばれよ、これからもがんばれよ!