老いぼれの独り言

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宿泊した南三陸ホテル観洋が主催する「震災を風化させないための語り部バス」なるものに参加を申し込んでみた。
所用時間は60分で手頃だし費用も比較的安価で500円だという。
当初は、この大震災の生々しい被災地をのほほんと観光して廻ること自体に相当抵抗を感じ気も退けたのだが現地の「語り部」さんしか知り得ぬ貴重なお話に耳を傾けることも大事かと判断し決意した。
大型バス3台仕立てでわたしらは2号車に宛がわれた。
高校生らしき日系アメリカ人女性2人も同乗されていた。
2号車の「語り部」さんは殊の外お若くわが息子と同レベルの40代のお方でした。
当ホテルの従業員でおられ、とても研究熱心で誠意と熱意に満ち溢れた輝ける人物でした。
当初の頃は、もっぱら被災状況を克明に説明するだけだったらしいが今やその状況を如何に冷静に客観的に捉え後世に語り継ぐべき大切なエキスを効果的に伝達するかに情熱を傾けられるまでに我が身が変質したのだと話されていた。
唯一、下車して解説を受けたのが此の防災対策庁舎の前でした。
危機迫る最中防災無線のマイクを握り締め町民へ高台避難を叫び続けた故遠藤未希氏の面影が沸々と脳裏を過ぎった。
最後に彼女が屋上に通じる非常階段を必死に駆け上る凄まじき情況がまざまざと目に浮かぶ。
見れば其の階段の手摺が圧し曲がっている。
その手摺に向きを変えて更にもう一度合掌をし直す。
若き語り部さんは吐き捨てるように語る。
記念撮影は遠慮されたしと強調される。
況してや白い歯を剥き出したVサインだけはご勘弁願いたいと語調を荒げられたのでした。
ただし、此の骨組みだけの赤錆びたビルの遺影は確とカメラに納めてより多くの衆目を集めるように努めてほしい。
さらには、あなたたちの口から此の惨状をより多くの日本人に伝承して戴きたいと懇願されるのです。
人と人とがふれあう力を大切にしたいとおっしゃる。
あの時には、地震津波ともう一つ寒波の襲来を受け人の体温の温かさと人情の温かさを厭と云うほど痛感したのだという。
このふれあうことの大切さを一人でも多くの日本人に広めることが私の使命であり責務なのだと切々と訴えられました。
体験者ならではの真実味あふれる言葉に浅はかであったわが身に恥ずかしい思いがつのるばかりである。