此の盃は
巨岩に伍して
凛として
額四峠で採取した自家製陶土の試し焼きは大成功に終わったようだ。
原形を留めたまま焼き上がって来たではないか、長子初誕生時を彷彿させるほどの喜びを一人秘かに味わったのです。
恐らくは、1300度の燃焼温度に耐え切れずに溶解し消え失せる事しか頭にはなかったので何よりほっとし安堵した。
おまけに其の表面には小さき陥没状の凹穴が自然体でお目見えし浅い亀裂も随所に現われていてわたし好みの肌合いではないか。
お茶碗を造れば面白かろうと創作意欲をおのずと掻き立てられたのです。
その鉱床たるや確かに無尽蔵に近かろうが飽くまでも地権者の許可なく採掘は敵わぬ事だろう。
正規のルートに基づく折衝が待たれるのです。
いずれにしろ、此のみすぼらしくも野暮ったきお猪口ではあるが美酒を盛ってぜひ満月のもと祝杯を傾けたい。
此の盃に
オンリーワンの
ほまれあれ