老いのひとこと

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並外れた馬鹿でかい水滴を作ったものだ。


一たび此処に貯えた硯水は恐らくわたくしが死ぬるまで用いたにしろ使い切れるものではない。


丁度区切れの好い此の齢に其の最初の一滴を今嘗て用いた事のなかった至宝の硯「龍池硯」に注ぎ松鶴製墨「三香」で以って磨り清め経典「般若心経」をしたためてみようとふと思い付いた。


つまりは、写経とやらに挑戦いたそうと決意したのです。


此の自作の水滴を有効にしかも厳粛に使い熟すために恭しくも書初めの儀を設定たしたのです。


勿論、参列いたすものは吾只一人で笛太鼓の雅楽あるはずもなし、それにしても遊びこころの致すところなのです。


17文字が17行並び居り最後の行だけは18文字にして計276文字なのだという。


字配りには気を付けたはずだが上の空白部が一様ではなくだんだん狭くなってしまった。


最後も文字は横一線に並ばず凹凸が生じてしまった。


ただ、最大の難点は此の水滴君は恥ずかしくも裏漏りを仕出かす事なのです。


此ればかりはどうしようもなかろう。


わたしの手作り水滴は斯くしてデビューしたのだがお習字のお稽古に勤しむ大阪の孫に使って貰えるようにお願いする事にしました。


裏漏りするような馬鹿でかい代物をプレゼントされた孫にとってはさぞかし有難迷惑だろう。