老いのひとこと

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孫娘からメールがきた。


「新入部員が入ってくれました初心者でした。」


たったそれだけのメールであったがそこには彼女の云うに言われぬ最高の喜びが滲み出ていたのです。


孫娘の通う高校には剣道部は在るにはあるが部員は彼女一人だけで文字通り孤塁を守り貫いてきたことになる。


それ故にその喜びはさぞかし一入であってであろう。


自然消滅という廃部の憂き目から解き放され存続再生への希望と期待の夢が間違いなく繋がった。


これ以上の喜びはない。


メールの最後に付け足すように「6月2日は総体です」とある。


此の時、わたしは老骨に鞭打つことを決断し直ちに決行に及んだ。


能登に位置する田鶴浜の街まで車を走らせ疾走した。


孫には相済まない事をした、何故もっと早くに気付き相手をしなかったのかとおのれを責めた。


道場では新人たちへ基本を授けていたが事情を告げて急遽孫の相手をした。


来る総体を機に引退の身、高校最後の試合で有終の美を飾らせたい。


いや、潔く戦い潔き負け方を是非とも孫に授けたい


何としても授けねばならない。


わたしはその使命感に燃えて孫の打突に応じ返した。


悔いが残らぬようにというが彼女には大きな悔いはこびり付いて離れようがなかろう。


その大きな悔いをほんの少しだけでも軽減できるようにわたしは何かを為さねばならない。


ほんの束の間の稽古だがわたしは何かを為さねばなりません。


何もできぬことは分かっていても最後の奉仕とこころして何かを為さねばなりません。