老いのひとこと

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面を被ることは生きている証。


面紐をぱんぱんと張るところが良い。


身もこころも張り詰めて我れ出陣するのではなく出塵いたすのです。


勇ましく闘魂を燃やすだけではない、暫し世俗を離れ清らかな境地を得たいだけなのです。


此のたった一度の日曜稽古が待っている。


錚々たる常連剣士が待っている。


此の道場は愚直にも只ひたすら基本打突に徹する。


切り返しと正面打ちに眼目を置き専ら正攻法を互いに学び合う。


 


 


偶々わたくしが元に立って打太刀の厳しい正面を受け体よく捌くべきことろをわたしの不手際からよろけるように後転し道場に伸びてしまったのです。


すかさず皆さん方はわたしを取り囲んでいた。


無様な醜態を演じてしまったものだ。


大丈夫かと手を貸す方もいたが「大事ない」「大事ない」とわたしは自力で立っていた。


 


稽古が終わってからわたしは皆さんへ「アメフトを引き合いに猛烈な体当たりを喰らって恥ずかし限り面目ありません」と告げていた。


 


わたしはその時その失言に気付かなかった。


家に帰り風呂の中でやっとその愚かさに気付いたのです。


おのれの体捌きの未熟さ加減を棚に上げて何と不埒なことを口走ったものか。


掛り手打太刀の方への侮辱とも取れる暴言を吐いてしまった恥ずべき失態を此処に猛省しなければならない。


迂闊にも相方を傷付けた軽薄なる言動をいま衷心よりお詫び申し上げねばならない。


のみならず快汗で快感溢れるはずの道場に不快感をばら撒いてしまったであろうことに胸が裂ける。


わたしは何のために剣道に勤しむのか自問自答するのです。