老いのひとこと

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無断掲載


金沢にいて歌川広重の浮世絵の世界をさまよう事ができた。


広重生誕220年を記念して150点もの作品を県立美術館は開示する。


一つ一つの作品を丹念に文字通り目の当たりにしてきた。


原寸大の39×27㌢はそんな大きくはない。


小さな人物の顔の表情まで捉えるにはどうしても被り付きになる。


身を沈め中腰姿勢の連続は結構きつい。


それも壁面に沿って左へ蟹の横這いのようにゆっくりゆっくり移動する。


数珠繋ぎの来館者の人の輪がスローモーに左旋回している。


正味一時間を過ぎた頃なんと情けなや気分朦朧として急に立ち眩みが襲うではないか。


場を離れロビーのソファ―に身を沈め一時休み徐に持参の麦茶で喉を潤おせば一人の人物現われ館内の飲食は罷りならんと厳重なるお仕置きを頂いてしまったではないか。


小さな文字の解説文を読み作品の鑑賞に一分間を要しても150分最低二時間半はかかろう。


体力気力の減退を嘆かざるを得ない。


それでも江戸時代の天才浮世師の生の作品を存分に堪能できてこんなに素晴らしいことはない。


広重の鋭い観察眼は夜の雰囲気のみならず雨の降る様子や烈風吹き荒ぶ情景をも見事に描写した。


風に煽られ被る編み笠が転がる、其れを慌てふためきながら追い掛ける其の人物の表情たるや幾ら見ていても見飽きることはない。