老いのひとこと

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久し振りに新田次郎の「八甲田山死の彷徨」にお目に掛かれた。


1977年制作の東宝映画「八甲田山」をテレビで見た。


何度見ても見飽きない見る度ごとに新たな感動をいただく。


絶対服従が鉄則の上意下達の軍隊組織の中に二つの指揮系統が迷走した。


上官の命令は天皇の命令であった当時の軍規の下で山田大隊長の理不尽な命令に神田中隊長がおのれの身を捨て処刑覚悟でまさに別行動に出んとする決定的な場面に胸ときめいた。


北小路欣也が猛吹雪の中で演ずる其の葛藤する表情がとても印象的で美しい場面だった。


 


しかしおのれの意に反し神田中隊長は百五十六名もの若き兵卒の命を守り切れなかった慙愧の念から自ら舌を噛み切った。


中隊長には未だ生きる余力を残したまま敢えて雪中にわが命を埋めた。


生き恥を曝すことよりも自死の道を選んだ。


片や三国連太郎演ずる山田大隊長は無様にも担架に担がれ生還するもいたたまれず拳銃自殺に至った。


上に立つ者は責任を取って然るべし。


此の映画は其の責任の取り方を両者対比してわたしたちに訴えた。


尤も青森第五聯隊と弘前第三十一聯隊及びそれを統括する上層組織第八師団にまでは決して累が及ぶことはなかった。


何時の時代も世の慣わしである。


 


此の映画を見てよかった。


此の映画は何度見ても見飽きることはない。


 


映画のタイトルに殉ずるかのように出演なされた名優たちの多くは既に此の世から旅立たれてしまった。


 


衝動に駆られて今一度新田次郎の作品「八甲田山死の彷徨」に読み耽る。