老いのひとこと

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    イクシー200Ⅱ号逝く

あーあ、人生ままならず悲嘆の上に落胆が輪を掛ける。

イクシー生還の悦びも束の間のぬか喜びに終わった。

見知らぬ善意のお方のお蔭で確かに現物がわたしの手元に戻ったのだがその折にSDメモリーカードが在中しレンズが異常なく飛び出すところまでは確認するもののシャッターが落ちること迄をも確かめようとはしなかった。

其の翌日、首掛けストラップに厳重に結わいた現物をズボンのポケットに忍ばせお出掛けした。

一巡し、なでしこの丘に差しかかれば甲高い野鳥の囀り、見上げれば電柱にⅠ羽いる、オナガのようだ。

よーし待てよとイクシーを取り出し望遠操作でレバーを回すがレンズは動こうとはしない。

その時はじめてイクシーの異常に気付いた。シャッターを切ろうとボタンを押せども落ちなかった。

又しても茫然自失、目の前が眩み立ち竦む。

昨日の悦びが大きかったばかりに失望の度合いは倍返しを喰らってしまった。

シャッターの故障は致命的でキタムラへ持ち込めども絶命宣言あるのみ。

救いはメモリカードのデータが安泰であり保存の状態が良好であったことだけか。

それだけで十分でないか。

老生の晩年の記録が生き永らえただけでも悦びと致さねばならない。

 

我が伴侶として常に行動を共にしてくれた愛機イクシー200Ⅱ号は既に撮影機能を失い廃物と化した。

美しい容姿のまま魂だけが抜け落ちモヌケノ殻同然ではないか。

余りにも惨めすぎて見るに見かねるのである。

極めて慙愧に耐えないのである。

 

不注意にも尻ポケットから落としたわたしが悪かったのです。

すべて自業自得と言えるのです。

これにて失敗談は終わり。