老いのひとこと

二三日待ての忠告が在ったがどうしても気がはやる。

翌朝4時過ぎに目が醒めスタンド電球を灯して文字の縁取りにナイフを入れる。

たかが二文字だが橋の字画が細かすぎよう。

食み出さぬよう入念に慎重にしごとはなかなか捗らない。

既に乾き具合は丁度好い、幸い今日の稽古中止の報が入り腰を落ち着けて果たそう。

午後1時半に作業開始、手慣れぬしごと故手がビビる優柔不断さの余り刃物が怖い。

少しく経つうちに脳作業が動き始めたようだ。

陶芸用カキベラは役立たずで専らメス状ナイフと彫刻刀で意外な効能を発揮したのが不要となった薄手の診察券やポイントカードと薄っぺらな金属片が図らずも大殊勲を遂げた。

切り込んだ溝へ柔軟性あるカードを差し込めば思い切りよく彫り込みが可能となった。

如何なる小さなミスとて許されない、厳格なる正確さを期して石橋を叩きながらの脳作業が延々四時間三十分を要してつづいた。

何とか到達点に辿り着いた。

大いに疲れたので更なる微調整は後日にいたそう。