65年むかしに卒業した野田中の旧友たちが山代の山下屋に相集い久し振りに歓談した。
八十路に差し掛かりし皆さん方とは思えぬ赫灼たる振舞である。
偶々話題が渋川流詩吟に及んだ折にわたしは周りの雰囲気を弁えずに突然にも光太郎の「秋に祈る」を図らずも吟じてしまった。
当の本人は酔いも手伝い好い気になって朗々とやってしまったということだ。
バイキング様式の大きな食堂一杯に行き成り異様な音響が轟くのでみな驚いて怪訝な視線を注ぎ込んだ。
中には起ち上がり睨み返す方も居たが委細構わず益々調子に乗って最後まで声を張り上げてしまった。
はた迷惑も考えずにあの酔っぱらい爺さんには困ったものだと暫し周囲は唖然とするだけだった。
誰一人として拍手するものもなくシラケ鳥が一羽飛んでいるのだが当の本人は結構ご満悦のご様子でした。