敗戦直後のころ父忠勝は知友瀧川武雄氏に二枚の油絵を所望したのだろう。
一つが犀川河畔でありもう一点が此の薔薇の絵なのです。
わが父は慎ましやかな仮住まいに此の絵を掲げてこころの潤いを戴いていたのだろう。
マイク眞木の歌の文句ではないが寂しかった父の家が明るくなった。
寂しかった父のこころに薔薇が咲いた。
あのフォークソングは父だけではなく日本人の一人一人のこころの中に真っ赤な薔薇の花を咲かせてくれたのです。
瀧川画伯の薔薇の絵からは父忠勝も母としも弟鐡二も家族の者みんながこころの慰みと生きる勇気を盛り沢山戴いて参ったのです。
わたしたちには掛買のない一幅の絵なのです。
此の際は拙宅の玄関のいちばん高い天井に張り付く位置に掲げさせて戴きました。
むかし同様、芳醇な香りを末永く振り撒いて戴きたい。