老いのひとこと

アラートの中、日曜稽古に汗を流す。

ふら付く身を着座させ、面紐を解き胴紐も解いて、そして垂帯をほどいて徐に所定のルールに従い胴と垂を結わいで片付けようとするのだが其れが出来ない。

皆目思い付かない失念したまま思い出せない。

ちぐはぐなことを何度も何度も繰り返すおのれの姿からは此れこそは紛れもない正真正銘なる認知症ではなかろうか。

益々気が落ち着かず焦りに焦り捲る。

不安感と焦燥感が入り交じり苛む。

ところが不思議なことに断末魔の悲鳴のような唸り声を発すると同時に微かに記憶らしきものが甦った。

思い出して呉れたのだ、おのれ自身ではない何か知らないが何者かがわたしの記憶を呼び戻して呉れた。

暑さの所為にしてはいけない此れぞまさに認知症の起こり頭に違いない。

起こり頭を捉えたことはわれ乍らも褒めてつかわさねばならないのか・・・

 

一過性であってほしい。

其の後は大丈夫そうだが・・・