老いのひとこと

外歩きには杖こそ持参すれど努めて杖は付かぬよう心掛ける。

とは申せどやっとの思いで歩いている分際で在りながら僭越にも烏滸がましく面を被りて竹刀を握る。

週に一度の日曜稽古は野々市尚道館以来の慣わしでわたしに取りては生きる糧そのものになった。

最早車の運転は鶴来街道を突き抜け武道館へと急ぐ此の道のみ、専ら防具運搬車両のハンドルを握るのです。

 

やはり肩身が狭いし気が退ける、半身不随には至らずとも老い耄れが床を踏むには決断と勇気を要する。

若い衆に気兼ねなく懸かってゆくには誠心誠意まことを尽くさねばなるまい。

有らん限りの声張り上げて「お願いします」「有難う御座います」と一期一会の気を新たに致し居る次第だ。

尤も、口調と語尾は曖昧ながらも只ひたすら蛮声をば吐き出す。

また老い耄れが来上がったと疎んぜられるようにでも為れば我が剣道人生は終わりだ。

そう為らぬよう誤魔化し手抜きを戒め今日も掛かりゆく。