老いぼれの独り言

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電信柱を抱きかかえる様に寄り添うように植物が自生する。
雑草に過ぎぬだろうから根こそぎ引っこ抜こうと試みたのだが、よく見れば可憐な白花がまるで訴えるかのように清楚な姿でわたしに哀願する。
どうしても処分するは忍び難く、先ずはお名前だけでもとPCや手持ちの図鑑で捜すが見当たらない。
田上の自然史資料館へ行く先に先ずは上野さんに聞けば手っ取り早いと電話で概要を説明し照会した処、それは恐らく「ワルナスビ」だろうと彼独特の口調で断言された。
それで「ワルナスビ」なる植物を検索してみれば此れ大変な厄介ものであることに気付いた。
「ワルナスビ」と命名なされた牧野富太郎先生ご自身ですら後日談として、これ程手も出せぬならずものはこの世にいないのだと痛く嘆き悲しまれたらしい。
とにかく葉にも茎にも棘だらけおまけに根深く地下茎が広がり耕運機で掘り起こせば切断された根毛が皆生き返りそこらじゅうに繁茂し恐るべき繁殖力を発揮するのだという。
更には、サポニンとかソラニンなる有害物質が家畜の体内に入れば神経障害まで来たすらしいのです。
拙いことに除草剤を寄せ付けない強者らしいのです。
すわ一大事、わたしは即刻伐採するべくノコギリと鋏をもって現地へ赴いた。
とにかく切り倒し天日干ししたものを焼却処分いたすべしとおもむろに手を差し伸ばしよくよく見れば全然棘がない。
茎にも葉にも花や実にも棘らしきものが見当たらない。
すべすべした感触で危険性がどこにもない。
わたしは再びPCを開きいろいろ検索を試みるうちに、どうもこれは「ワルナスビ」には非ずして「イヌホオズキ」であろうことに
ずぶのど素人のわたしが辿り着いたのでした。
 ほおずきに似てはいるが有用性が全くないので頭にイヌを付けて役立たずの「イヌホオズキ」と云う不名誉な名前が付けられたらしいのです。
 処が、役立たずどころか漢方薬としてオデキ用や解熱利尿剤、薬用酒にもなるという。
 一部の人たちは葉を食しているという。
 「ワルナスビ」も「イヌホオズキ」も共にナス科でナス属に属する同類仲間に近い似た者同士でありました。
 上野先生へ報告申した折には電話越しに何とも言えぬ苦笑いの先生のお顔が映し出されたのでした。
 
 夕刻にはジョウロの水をたっぷり飲ませてやりました。
 清楚で可憐な白い花たちは人懐っこい笑みを返してくれた。