老いぼれの独り言

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                         ユースホステスの建物のお蔭で直撃を避け得たという
 
此処に不埒極まりない不届き者がいた。
全く呆れて物も言えない。
確かに塩害著しく枯死寸前ではあるが樹医さんたちの懸命の処置が功を奏し「奇跡の一本松」として見事活き返ったものと硬く信じて疑うことがなかった。
おのれがこれほどの時代遅れの田舎者であったとはまさに呆れてものが言えないのです。
赤緑色弱の身ではあるが陸前高田の「奇跡の一本松」に遭遇し感嘆の声を発した。
くすんだ色合いだがわたしの目にも明らかに濃緑色の松の葉が見えた。
至近距離とはいかず20メートル以上離れてはいたもののその威厳に満ちた威容には圧倒された。
辛苦に耐え抜き生き延びた此の大樹を今日も樹医さんたちが数人がかりで処置されている、お世話さまだと何枚かシャッターを切ったのです。
ところがその直後に急転直下、此れが単なるモニュメントに過ぎないことが判明したのです。
時代の波、文明の波は遠慮会釈なくどんどん前へ前へと流れゆくそのスピードに付いて行けない実に御目出度き哀れを囲う老いぼれが独り此処にいた事になる。
 しかし、仮に地中に深く根張りした本物の根毛ではなく鉄筋コンクリートであったにしろ、樹皮に耳を宛がっても樹液が師管導管を流れる音がしなくてもよい、松の常緑の葉が化学生成物であったにしろ此の樹を仰ぎ見た者たちに勇気と感動と感銘を与えるのならそれで良いではないか。
 やはり、「奇跡の一本松」を見に来てよかった。
 工事中の柵を遠巻きに延々と歩いて辿り着けてよかった。
 枯死し朽ち果ててもなお凛として立ちつづけ生きつづける此の松の老木を見に来てよかった。
 
 此処、陸前高田市南三陸町とは異なり土盛り嵩上げの方策が違っていた。
 此処はダンプカーではなく山肌を発破で掘削し巨大で大仕掛けなベルトコンベアーで土砂を運んでいる。
 もっとも、われらが見学中は昼食時で機械も従業員の方々も休まれていた。
 凄まじき騒音と復興の槌音は耳に出来なかったのは少し残念でした。
 発破の炸烈音だけは何度か轟きわたった。