無断掲載
隆盛を極めた一時の剣道ブームが立ち去って随分久しい。
40年むかしの往時には野球やサッカーに匹敵する剣道少年たちが町道場にあふれた。
礼儀を貴ぶ剣道精神が豪く人気をさらったの
でした。
ところが好い仔に育つのは剣道に限らない。
野球少年にもサッカー選手にも素晴らしい人材が育つことが知れ渡り何時の間にか見る見るうちに剣道人口が衰退の一路を辿った。
潮が引くようにブームが過ぎ去ったが全剣連のお偉方はまさか又いずれ潮が満ちるだろうと手を拱いたわけでは決してないはずだ。
きっと善後策を講じたであろうがそれが全く見えて来ない。
つまり理念に謳う「人間形成の道」を如何ほどに真剣に追求したのか其の足跡がわたしには全く見えなかった。
処が今般の長野大会で剣道再生への道に全使命を託したかのような素晴らしき剣士に出逢えたのでした。
準決勝で対戦した福井代表の林田選手と大阪代表の村上選手の一戦が見ものだったのです。
両者ともに一歩も退かずに只ひたすら攻めの剣道に徹した。
しばし剣尖の攻防、攻める相手動く、すかさず打突をだす。
両者ともに激しく攻めての相討ちの攻防が展開された。
わたしが見る限り間合いを嫌って退く場面はほとんどなかったと思う。
運動神経抜群の剣士たちが恰もシーソーゲームのように攻められたら間合いを余して退く出れば退くの連発、隙あらば打とうとまるで空き巣狙い、モグラ叩きを幾ら見ていても面白くない退屈だ。
むしろ彼らが哀れに見える。
此れいささか問題あり猛省を促したい。
負けたくない勝ち敗けに拘る。
勝利の追及のみに突っ走る。
此れは競技剣道の堕落の一語だと公言して憚らない。
決勝へ駒を進めた村上選手は松崎選手を相手におのれの剣道を信じおのれの剣道に徹した。
果敢に攻めて美しく散った。
何ら悔いることなく勝者松崎選手の素晴らしい面技に称賛の目を注いだことであろう。
村上選手のような剣士たちが日本武道の将来を担って旧態依然とした剣道に活路を開いて頂かねばならない。
胸を打つ感動の場面を沢山頂戴し本当にありがとう。