2022-01-09 老いのひとこと 一難去ってまた一難、一時たりとも平穏な日々を迎えたことがない。 此れぞ、人の世の定めかも知れぬが我が身に降り掛かる悲運に涙する。 狭き料簡の持ち主ゆえ一笑に付すだけの雅量もなく只ただ悲嘆に地団駄を踏む。 昼食時に何気なく好物の大根寿しを口にいたせばビリリと歯が染みた。 尋常ではない強電が走り脳天を突き破る。 未だ嘗て経験がない、終に来るべきものがやって来たかと観念した。 食べねば命が危うかろうと蕎麦の一筋二筋をそっと奥へ押し込み嚥下する。 ところがスープの塩気が一瞬触れて又しても縮み上がる。 食餌が摂れない食餌は苦痛以外の何物でもない。 其の日の夕餉は断食同然で翌朝は朝飯を前に歯医者へ駆け込む。 受付で事情を話すが非情にも昼近くまで 置いてきぼりを喰わされる始末に又泣いた。 それでも露出した歯神経を麻痺させる処置に期待を寄せたがまるで嘗ての軍医の処置の如く軽くあしらわれ処置ナシで終えた。 其の日の昼は焼き芋の欠片と食パンを牛乳で融かして流し込む。 当分は流動食とカロリーメイトで栄養補給を図るしかなさそうだ。