老いのひとこと

              無断掲載

気滅入りし折には活力を戴くべく小冊子「佐久間勉艇長の伝記」を紐解く。

如何に時代が軍事色に塗り潰されし背景があったにしろ利他を尊び挺身奉仕に徹した美談は絶賛されて然るべしと言えまいか。

弱冠三十歳にしてあの立ち居振る舞いあの沈着冷静なる判断を下し得たことはまさに驚嘆の極みだ。

絶命の直前までペンを握りしめて遺言をしたため続けた偉大なる人物像には我が胸中わなわなとただ震えるのみ。

気圧高まり酸欠迫り来る中よくぞ200行もの遺文を推敲し得たものだ。

 

老輩は此れに肖らなけばならない。

此れを励みに拙文を綴り続けなければならない。

今迄の愚行の続行を決意させていただいた。

感謝したい。

 

更に加えて佐久間勉艇長は実母と愛妻を失う不運を機にちゃんと身嗜み能く遺言をしたためていたと言う。

此れにも肖らねばならない。

恥ずかしながら此の齢にして漸く其の事に目覚めさせられた次第だ。

師と仰ぐべき優れた人物に違いない。