老いのひとこと

まるで他人事のように自分は「老人性うつ」とは関係がないと平気な顔でうそぶくのは甚だ宜しくはなかろう。

生来この傾向は持病の如く我が身には付きまとう。

青春時代の一時期にはほぼ一箇年を棒に振ったし現役晩年期には背広の内ポケットには依願退職書を密かに忍ばせたことは偽らざる事実なのだ。

休火山のようにいつ何時噴出しないとも限らない危険な要素を秘めるのです。

 

今や食欲旺盛の年代ではないが辛うじて三度の食事は済ましおるが酒量が極端に減った。

睡眠は小用のため一二度は目覚めるが今のところは一応支障はない。

 

しかし言うに言われぬ心の寂しさが終始付きまとう。

寂寥感というべきか寂寞感に襲われると表すべきか何となく寂しい心情が覆い被さるのだ。

 

もう既にとっくの昔に四人のいとこ達はわたしより遠ざかり去って行ってしまった。

孫たちと云えども確信をもって食い止める自信はもう何処にもない。

もう何人かはしだいに遠ざかりゆく。

寂しいなあ。

 

おしなべて身内のものからも疎んぜられ見放されても何の不思議もない。

 

元々此の我はお空の遥か彼方で一人ぽっちで立ちすくめるはんぱ者。

 

 

一日も早く笑顔で待ち受けて呉れる母の御許に帰りたい。