老いのひとこと

元旦の激震から早や一か月が過ぎた、ふれあい体育館の駐車場は一時の満車状態からすれば少しばかり空きスぺースが目立つようにはなったが未だ九割方は埋まる。

両眼保護のゴーグルを掛けて参らば荷下ろし中の一台の車両に出くわした。

同じ人間同士自ずと声がでる、「此の度は大変でした」…「何かお手伝い致しましょうか」と語り掛ける。

極々普通の表情で「有難うございます」「いや結構です」「主人が居るもんでよろしいです」と応答が返った。

こんな時に此処で時を過ごすことは有るまじき行為かと逡巡しながらも暫しいつもの動作に入るもやはり気乗りはしない。

足を止めて、思い切ってご主人に声を掛けた、「大変失礼かと存ずるが何方の方面から」と尋ねれば息子たちと同じ世代で憔悴し切った五十年配のお方から「輪島から来ました」と返答を戴く。

つづけて火災で被災されましたか海のお仕事でしょうか、ご家族みんなで・・・と尋ねかったがやはり躊躇した。

お顔を拝見してそんな問い掛けは人として出来っこなかった。

目頭が潤んでしまった、安っぽい「頑張ってください」の言い草は無用でしかない、只ひたすら黙したまま頭を下げた。