神奈川県警高鍋練士六段に対するは埼玉県警東永同じく練士六段による雌雄を決する試合で決着がついた。
高鍋さんの諸手突きが東永さんの突垂れに炸裂した。
再生ビデオでは竹刀が折れんばかりに撓っていた。
間髪を入れずに繰り出した東永さんの正面打ちは、突きのショックで僅かに手元がブレ打突部位を外していた。
勿論、生の画面では視覚で捉えることはほとんど不可能に近い、まさに刹那の勝負で決まった。
東永さんは終始攻めていた。重心の低い安定した姿勢で前へ出た、じりじりと高鍋さんは退かざるを得なかった。
この静かなる攻防のあと、高鍋さんが一転して,するりと相手の打ち間に身を挺した、捨て身の技とみた。
東永さんは、先を取ってここぞと面に行ったのだが、高鍋の剣先は最短コースと辿り、東永の喉笛を突き刺していた。
高鍋さんは、相手十分に打たせて後の先にて勝ちを制した。
まさに、一刀流の極意を地で行ったことになりはしないだろうか。
いずれにしろ、東永選手は試合に勝ったが勝負で負けたことになりはしないだろうか。
見応えのある立派な試合であった。
特に、高鍋選手の有効打突の後の見事な残心姿勢、世の多くの剣士とりわけ少年剣士や中高生剣士大いに見習うべきなり。
更に、驕り高ぶる気配無く敗者の意中を察して謙虚さを貫き通した姿にも敬服した。
決して、白い歯を見せることはなかった。
剣の心を如何んなく発揮した素晴らしい試合であった。
端正な面立ちも手伝い猶の事印象的だった。