老いぼれの愛犬日記《13》

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                        愛犬リり
 
13 この犬に敬意を表す
 
一匹の駄犬に過ぎないと思っていたが、この犬の真の勇気に感服した。
ぐったりと横たわり、時折痙攣を起こしつつ泣き叫ぶ姿からは想像もできぬことだが、或る時目を離した隙に、愛犬リりは檻の外に這い出し、車庫に通じる三段の階段をもんどりうって転がり落ち、車庫の土間の中央部にまで自分の体を移動させていた。
歩けぬことを承知で歩行に挑戦したのに違いない。
翌日同じような行動を現認した。
何かを訴えていることを知ったわたしは、リりを車庫まで抱きかかえて移し変えてみた。
すると、この犬はもがくように立ち上がりよたよたとよろける様に歩み始め、その場に無惨にも崩れ落ちた。
側頭部をコンクリートに強打して横たわっしまった。
無理を承知で果敢にも歩行訓練に自ら挑戦した証しだ。
艱難辛苦 (かんなんしんく)に直面しても怖じけることなく敢えて克服の道を自ら手探りしている敬虔 (けいけん)な姿に涙がでてきた。
懸命に生きるための健気 (けなげ)な姿から大きな勇気をもらった。
この犬から生きるための勇気を授かった。
大した奴だ。立派な犬だ。さすがわたしの自慢の愛犬だ。