老いぼれの弓事始め《27》

イメージ 1
 
 
㉕2月28日
久方ぶりの冬の好日です。
相も変わらず本日も、巻き藁の前で足踏みすることに躊躇いもなく取り掛かった。
鏡の前のおのれと自問自答しながら幾本か打ち込んだ。
漸く、ユカケも手に馴染み取り懸けが思うようになり掛けた矢先にまたしても珍事が起きてしまった。
矢が巻き藁には至らず甲高い金属音を発したまま足元に転がってきた。
見れば矢が意外に短く見える。
なんと折れているではないか。
矢じりの部分がない。
巻き藁の中に埋没したものと思い暫し探すがない。
もう一度辺りを探せば、何とわたしの右斜め後方に転がっているではないか。
魂消ると云おうか呆れると云おうかお粗末さにも限度がある。
万策を講じたが武運尽き果て、遂に刀折れ矢尽きた武勇談ではない。
矢が折れたんじゃ余りにも破廉恥すぎて話にもなりやしない。
 
幸い、朝っ端だったので道場には誰もいなかった。
アクシデントを避けられたことは喜ばねばならない。
帰りに皆中堂にてまた一本注文した。