老いぼれの北海道行き《5》

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北海道紀行           二〇〇五年秋
 
 
⑤襟裳の春は何もない春です。
旅人なら一度はこの言葉に誘われて行ってみたい衝動に駆られよう。
自分の心の内面に潜む鬱積した、なんとも遣る瀬無い人間の性を詩人岡本おさみさんは見事に代弁してくれた。
わけのわからぬことで悩んでいる内に老いぼれてしまいました。
いじける事だけが生きることだと飼い馴らされたので、私は今もって身構えながら話しをするのです。
自分と同じ思いの人間がやっぱりこの世にいたことに気付き安堵し心休まった。
本当に何もない襟裳だからこそ、遣る瀬無い私のさがを暖め癒してくれるのだろう。
もう一度、この歌を口ずさみながらだーれもいない、この岬の突端に只われ一人立ってみたいという誘惑に駆られた。
そのときも烈風吹きすさぶ中の方がよい。
風が我執と言うわだかまりを吹き飛ばしてくれるだろう。