老いぼれの夕雲考《112》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(38)
 
畜生心を戒めた師夕雲
 
㉛【畜生は元來天理を全く得ざる物なれば五常備らず、五常なきが故に君臣父子夫婦兄弟朋友の分も無く、時々刻々唯食を貪るにのみ專一の心を用ゆ、劣れるものをば己が類也と云へども、今日の食として終に飽く事なく、一生貪瞋癡の三毒の深き者也、】
口語訳
“畜生は元来天理を全得せざるものなれば五常備わらず”といいます。
畜生は欲望だけで生き、理性の知覚はない。
また、生きていることへのわきまえもなく、死すれば肉体は腐り果てるだけなのです。
そうであるならば、五常なるものは備わらないことになるのです。
何と言っても畜生には五常がないので、君臣・父子・夫婦・兄弟・朋友の区別もなく、ただ専ら餌食を貪り喰らうことだけに心を注ぐことになるのです。
彼らは、外形が大きいか小さいかを見て勝負を挑み、自分より力の劣る相手なら仮に同類の仲間であっても、今日の餌食として共食いに至ってしまう。
とにかく死ぬるまで、貪欲(どんよく)・瞋恚(しんい)・愚癡(ぐち)の三毒、三つの煩悩に苛まれるのです。
即ち、欲深くむさぼること・自分に逆らうものに怒り怨むこと・言っても仕方のないことを言って嘆くこと、この三つの毒に冒されていることになるのです。