その7
七本目三方斬りにおいて、正面の敵を牽制しつつ右の敵を斬り付けて、再度正面を一瞥しつつ受流し体勢から左の敵を諸手にて斬り伏せる。
その折の刀勢に納得がいかないのである。
先ずは、何故かしら羽音が消えてぎこちない。
剣尖の動きが委縮し、斬ったという感覚がわが身には一向に伝わらない。
いろいろ考察するに、どうも右手主体の刀捌きに起因するようなので、敢えて意識的に頭上にて添えた左手で以って振り斬るように相努めている。
併せて、その折には柄頭で敵の御凸 (おでこ)を打つ感覚で剣尖の動きを鋭く為すように試みている。
案外、そのことが功を奏したのか居合そのものが大技に近付いた気がして自身納得している。
なお、同様のことが十本目四方斬りに際しても、後ろを突いてから前の敵を斬り伏す動作の中にも言える事であった。
その都度、留意しながら抜いている。