老いぼれの独り言

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自力更生を豪語した以上何かを為さねばならない。
 今までの日課を熟すだけでなく新たに施すに足る何か良策がないものかと考えあぐんだ時ふと守山さんからの賀状のことを思い出した。
 10年も昔の頃、縣武の剣道教室に足繁く通っていた。
 その折、腰に異常を来たしたので二度ほど守山さんから施術を戴いたことがある。
 公園のベンチに伏して、とにかくとても痛かった記憶がある。
 効果覿面( てきめん)とまでは行かなかったがとにかく徐々にではあるが直った事には間違いない。
 10年越しに電話を入れて二言三言会話を交わす内に先方は電話の主がわたくしであることに気付き“たかはしさん”と名乗られたではないか。
 これには些か魂消てしまいました。
 神様からの思し召しをあたかも待ち受けるようのわたしの電話を受けられたのです。
 午後2時に守山道場を来訪するべく1時過ぎに家を出た。
 ところが、何と頓馬なことにわたしは彼の道場の住所と連絡先電話番号のメモ書き紙片を持たず家に置いたまま疋田町タイヤ館まで来てしまったのです。
 この近辺を凡そ小一時間痛い不自由な御足を引き摺りながら探し回ったのです。
 その時、とある交差点で白衣のお方が手を振って居られるではないか。
 紛れもなく、守山さんご本人ではありませんか。
 今また、何かの因縁に引き寄せられたかのように得体知れぬ魔物のような魔力が磁力となって盲人同然のわたしを導いてくれたのです。
 と申すより、藁スベにもしがみ付きたき思いで彷徨い歩く老人の姿に彼のお方は救いの手愛の手を差し伸べてくださったことになる。
 神の手に導かれてわたしは道場と称する施術室に案内されベット上でうつ伏せになった。