前田利家は六尺に近い大男で歌舞伎者であったという。
馬上にて槍を持つあの金 ( きん )鯰 ( なまず )尾 ( お )兜 ( かぶと )の勇姿にはさぞかし堂々たる威圧感が漂ったことでありましょう。
殊更訳もなく此の金鯰尾の兜に挑戦してみた。
文鎮仕立ての玩具のようなミニチュアを見付けたのでそれを真似て見ることにした。
そこへ旨いことにも、孫が棄てていったフランス人形の帽子があったので型枠として活かすことが出来た。
本物のイグサで編んだ弾力に富むしっかりした造りで大いに助かりました。
10ミリのたたら板を帽子にかぶせ「たたら作り」に挑んだ。
何にも解からぬ者が見様見真似で実にずさんな作業に過ぎない。
兜の垂に当たる部分を錣 ( しころ )と云うらしいが此の部分を三段仕立てにし所構わず適当に凹凸を施してみた。
遠くから見れば何とか様になっている。
次いで、頭部のてっ辺に突っ立った烏帽子のような鯰の尾っぽのような「大鯰尾」を取りつけねばならない。
此れこそはまさに粘土細工であって適当にあしらってドベなしにぺたんとくっ付いた。
すそ野の広がった窪んだ底部が丁度旨いことに兜鉢に重なったので助かった。
いまのところは何とか倒れずに独り立ちしているようだ。
一日置いて金鯰尾の名の通り金色がほしかったがないので仕方がない、持ち合わせの黄色の色化粧土を塗りたくった。
錣 (しころ)の部分には一様に色化粧土のさびてつ通称鬼板を塗り込めて浮き出た凸部には色化粧土の黒を施しあとは弁柄にて適当にアクセントを付けて誤魔化した。
通常、兜にある吹返 ( ふきかえし )がないので少しばかり単調でさみしいがわたくしに致せば上出来の逸品に仕上がったではないか。
要は、お遊びとして楽しく在ればそれでよいのです。