額谷から四十万に抜ける峠道を名付けて額四峠と命名した。
此の峠道の一角に竹林がある。
季節を問わず好んでこの竹林の横を自転車で通り抜ける事がならわしになっている。
秋口の頃、わたしは此処竹林の地で粘土層に気付き採集したのです。
そもそも粘土の層が地表に露出するとはこれ如何に、
ど素人なりに調べてみた。
大桑の貝化石を聞いたことがある。
つまり、この辺りは太古の大昔には海の底であったのが長い年月により褶曲作用で隆起したものと理解した。
此の粘土の層は珪酸成分からなる栄養分のない痩せた土なのだという。
そして、竹林は痩せた粘土の層を好んで生育するのだと聞くのです。
此処、額四峠は粘土と竹林が併存しており条件がどんぴしゃりではないか。
とても興味深かったことは、何億年昔に白山が爆発し巨岩が噴出した。
その岩が長い年月を掛けて細かく砕かれやがて粘土となり手取川の水流と共に海底深くにどんどん堆積し、その粘土の層が地中に潜り込み沈降して行き地球の奥で熱気に熔かされてマグマになるのだというのです。
此の粘土の熔けたマグマが再び火山の爆発により噴出し巨岩となる。
斯くして粘土たる物質は地球の歴史と共にまさに見事に循環していることを知らされた。
此の循環の過程で異変が起き海中に堆積した粘土の層が地中に吸い込まれる先に隆起し地表に現れてしまったのが此の額四粘土に他なかろう。
わたしが手にする此の粘土は重いはずです。
46億年の地球の歴史の重みを今わたしは実感しているのです。
巧いとか下手とか見栄えがいいとか悪いとか、そんなことはどうでもよいことだ。
敬虔な思いで此の粘土を捏ねて愛でて心を込めて捻ればそれでいい。
何んと凄いではないか、粘土とて46億年の地球の歴史と共に立派に輪廻転生をいたしていることになるのです。
土を捏ね
土と遊びて
土になる
人の一生は粘土の比ではない。