何時もの自転車コースで額新保地内を行けば車道の隅でご婦人がお二人立ち話を為される。
野良仕事中の方はキューリを一本差し出される子犬を抱っこされるもう一方の御方はそのキューリをまさに受け取られんとしたその時に丁度自動車が来たので此のわたくしは自転車を止めて車をやり過ごした。
その折に、ワンちゃんを抱っこするお方がわたしの顔をまじまじと眺めまわして、「あっ体育館でいつもエイエイと遣っていられるお方じゃありませんか」と気さくなお声を掛けられたではありませんか。
もちろん初対面で見たことも話したこともあるはずがない。
咄嗟に好い返事も思い付かず「あっ、それは面目御座いません・・・いやどうも済みませんです・・・」と口にしたはずだった。
それとなく傍目で観察されていたとはこりゃまさに面目ないことです。
恥ずかしさが募る一方わたくしの挙動をば少しばかりは肯定的に捉えてくださったのだと勝手にお察し申した。
或る意味、ほっと致すと同時に内心とてもうれしかった。
体育館の隅っこで訳の判らぬ禅修行と素振りと打ち込み稽古、さらに法定の形の独り稽古に精を出す変梃りんな年寄りが一人いることに気付かれていたのです。
かたじけない気持ちでいっぱいになったのです。