老いのひとこと

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シャキッとしろと言われても無理だ。


そんな無理を承知で此の天邪鬼は3時ころを見計らいおんもへお出かけだ。


人通りは途絶えたとはいえさすが子供は子供だ。


わたしの後を男の子が一人ついてくる。


わたしの肘を見て痛くはないかと聞いてくる。


どうしてそんなに大きなおできが出来たのかと聞いてくる。


血が出たかと聞いてくるお薬を塗っているのかと次から次へと尋ねてくる。


わたしはその度にのらりくらりといい加減な返事しかしなかったのが好くなかった。


実はね、この肘のおできはタコだよと云えばよかった。


マウスと遊んでいる内にマウスに齧られたんだよと云えばよかった。


マウス操作のみならず文字入力の際にも必ず右肘をつく習癖を身に付けてしまった。


いつの間にかマウスタコが出来たんだよと云えばよかった。


 


少年は小学4年だという、年齢は10歳だという、明日は僕の誕生日だと嬉しそうに言う。


今から妹を保育園に出迎えに行くのだといろいろと能くお話をしてくれました。


話し上手ではないが朴訥とした口回しだがよくぞこのわたしの話し相手になってくれたものだ。


少年はわたしに何歳ですかと聞いてくる。


わたしは何歳ぐらい見えるかと聞けば少し考えて59歳と出来過ぎる答えが返ってきた。


60と云えば失礼かと判断し59にしたのだろう。


他人のこころを慮ることのできる良い子だ。


わたしはもうすぐに82ですよと云えば、その少年は少し間をおいて「じゃもうすぐ死んでしまうですね」と云ってくれた。


厭味のない透き通った声であった。


死ぬることも大変そうなので其の為の準備運動に今から行ってきます、バイバイと手を振って別れた。