老いのひとこと

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鶏小屋のやっさんから手伝って欲しいと依頼が入る。


陽が昇る先に仕事を終えようと7時に耕運機の操作に入る。


尤も初体験ゆえ先ずは操作技術の手ほどきを受ける。


羨望の機器に今ようやく触れることが叶い胸ときめき腕がなる。


耕す労作はいとも簡単機械に任せればそれでよい。


問題は方向転換だ、後進にギアを入れ少し退くギアを移動に変えUターンを試みるがなかなか上手くはいかない。


如何にも下手糞だが要は慣れるしかない。


「習うより慣れろ」の言葉通りだ。


機械化農業、省力化農業は家庭菜園にまで波及した。


労せずして凡そ20坪ほどの耕地は瞬時に掘り起こされた。


わたしは経験上鍬を入れることしか知らない。


一振り一振り精魂込めて振り下ろす。


それは豪くしんどい作業です、遅々として前へは進まずまさに忍耐の限界への挑戦に他ならない。


それに引き替え此の耕運機の威力たるや計り知れない。


そりゃ助かりますわいや。


でも、とても大事なものが失われたのではあるまいか。


一寸でも深く鍬を入れんと奮闘する農民魂、


嘗ての農耕民族が誇る掛買いのない精神的支柱が今やどこかへ素っ飛んでしまったような気がしてならない。


幾ら耕運機で耕しても消え失せた魂は掘り起こすことは出来ないのかも知れません。


8時を過ぎたころ突然空が掻き曇り驟雨が襲う。


夕立ならぬ朝立に全身びしょ濡れ這う這うの体でバイクに飛び乗り逃げ帰った。